
作物の葉で行われる光合成は生育に必要なエネルギーを作り出す生理反応であり、光合成の効率はその成長や収量を左右する重要形質となります。作物が生育する野外では環境条件は常に変化し、特に光は日中には非常に高い強度に到達しながらも、雲や植物体同士による遮蔽などにより数秒の単位で激しく変動します。よって、強光下における高い光合成活性と変動光に対する迅速な光合成応答の実現が、作物の生産性改良への有望戦略と考えられます。今後、世界人口の増加に伴う食糧需要の急増が予想されることを踏まえ、私は光合成の効率の改良を通した作物の生産性向上を目指す次の研究を展開してきました。

主要作物であるダイズは、全世界にわたって育成されてきた多種多様な品種が遺伝資源として蓄積されています。これらは見た目ひとつとっても大きな違い(変異)があり、光合成の効率にも幅広い変異をみせます。この品種間の変異は、ダイズのもつ遺伝子のタイプの違いにより生み出されます。
私はこれまで、ダイズにおいてどの遺伝子の、どのタイプによって高い光合成効率が実現されているのかを明らかにすることを目指した研究に取り組んできました。以上を通して、圃場環境にあるダイズの光合成の効率の品種間変異を制御する2つの染色体領域を世界に先駆けて同定しました。

光合成の効率は、大気から葉緑体へとCO2をどれだけ効率よく供給するか、またそのCO2を葉緑体でどれだけ効率よく固定するかによって決定されます。葉の表面に存在する無数の気孔は葉内へのCO2の取り込みを制御するゲートとして機能し、また葉緑体に含まれる酵素RubiscoはCO2固定を促す触媒として機能します。すなわち、これらは光合成の効率を決定する重要なピースだといえます。
私はこれまで、気孔の数とRubiscoの量を最適化することによる光合成の改良を目指した研究に取り組んできました。以上を通して、作物によっては気孔の数を増加させることやRubiscoの量を減少させることが光合成の効率向上へとつながる可能性を示してきました。

産業革命以降、大気中のCO2やオゾンの濃度上昇が問題視されてきました。また高CO2化に伴って、気温の上昇や深刻な干ばつが予想されます。これらは作物にとってストレスとなり、光合成への作用を介して成長や収量にまで影響を及ぼします。
私はこれまで、上記のストレス環境が作物に与える影響を光合成の観点から評価するとともに、それらの環境下で高い光合成活性や生産性を実現するメカニズムを解明することを目指した研究に取り組んできました。以上を通して、Rubiscoの量と活性を改変することが高CO2、乾燥環境における光合成の効率向上につながる可能性を示しました。